応急手当の原則(RICE)
安静(Rest)
患部を動かさない。けが人を落ち着かせる。声をかける。汗を拭いてあげるなど精神的に落ち着かせる。
冷却(Ice)
ケガをしたら早く冷やす。内出血を最小限で抑え痛みを軽減する。氷を砕いてポリ袋に入れて15分くらい冷やして感覚がなくなったら外して、15分くらいでまた15分冷やす。冷凍庫の氷はー20℃にもなり凍傷の恐れあり。
圧迫(Compression)
患部の浮腫を抑えるのが目的。腫れてくる場合が多いので血行障害に気を付ける。
高挙(Elevation)
患部を心臓より高く持ち上げて血液・リンパ液が流れ込むのを防ぐ。
外傷
切り傷、刺し傷、すり傷などがあり、特に出血、痛み、細菌感染の恐れがある。
- 必ず手を洗ってから手当てをする。
- 素手で傷病者の血液に触らない。
- 傷口には滅菌ガーゼなどで保護をする。
- 包帯を適切に使用する(三角菌などの使用ができるようにしておく)
骨折
交通事故、転落事故、墜落事故、スポーツ事故など強い外力により骨が折れたり、ヒビがはいることをいう。高齢者は骨がもろいため、弱い外力でも骨が折れることがある。
皮下骨折
骨折部の皮膚にキズがないか、骨折部が身体の表面のキズとつながっていない骨折をいう。
開放性骨折
骨折部が体表面のキズと直接つながっている骨折をいう。強い外力だけでなく、皮下骨折の鋭い骨折端が内部から皮膚を破って外に出ていることもある。
観察
全身をよく注意してみる。意識がはっきりしているときは聞いてみる。
受傷時の状況(どこがどのように)
- 骨折音を感じたか?
- 身体のどこが痛いか?
- 痛いところを動かせるか?
*動かしたり、無理に歩かせてしらべてはいけない。
*本人がわからないことがあるので、目撃者に聞いて判断の参考にする。
健側と比較する
- 腫れていないか?
- 形は正常か?
- 皮膚の色が変色しているか?
- ひどく痛むか?
開放骨折の特徴
- 神経、血管、筋肉などの損傷がひどいことがある。
- 出血が多量である。
- 骨折部が汚れやすく、感染の危険が高い。
骨折の手当て
手当の実際
全身御観察
- 骨折かどうかわからないときは、骨折として手当てをする。
- あわてない
- 傷病者をむやみに移動しない
皮下骨折の手当て
全身及び骨折部を安静にする
- 患部の固定
- 患部の高揚
- 変形を整復しないでそのまま固定して医療機関へ
- 体位は本人の楽な体位にする
- 毛布などで保温する
開放性骨折の手当て
- 出血を止め、キズの手当てをしてから固定する
- 骨折端を元に戻そうとしてはいけない
- 骨折部をしめつけそうな衣類は脱がせるか、キズの部分まで切り広げる
固定法
- 骨折部の痛みを和らげる
- 出血を防ぐ
- 骨折部の動揺で新たにキズがつくことを防ぐてあてである
副子(副木)
- 条件:患部の上下の関節を含む長さ、幅、固さ、できれば軽いもの
- 前項の条件を備えるものであればどんなものでもよい。身近にある板、棒、杖、傘、バットなども利用できる。
脊椎損傷
脊椎は頸椎、胸椎、腰椎、仙骨、尾骨からなり、中に脊髄を包んでいる。脊椎が骨折、脱臼すると、脊髄が傷つくことがある。脊髄が頸椎4番の上方で傷つくと、横隔膜運動による腹式呼吸も止まる。したがって、脊椎ことに頸椎の骨折は極めて危険なので体位の変換や運搬に慎重を要する。運搬にはバックボードを使用する。
脱臼・捻挫・打撲・肉離れ・腱の断裂
脱臼
脱臼は関節が外れたものである。関節周囲の人体、筋、血管の損傷を伴うことが多い。特に肩、肘、指に起こりやすい。適切に治療しないと関節が動かなったり、脱臼が習慣性になる。
症状
関節が変形し腫れて痛む。脱臼したままの関節は、自分では動かせない。
手当
- 患部の安静、上肢ならば三角巾を利用して固定する。
- 脱臼を元に戻そうとして関節周囲の欠陥、神経を痛めることがある。
- できるだけ早く医師に見せる。
捻挫
捻挫は正常な運動範囲を超えて力が加わったために、関節が外れかかって戻ったものである。関節周囲の靭帯、筋、腱、血管の損傷がある。足首、手首、指、膝などに起こりやすい。
症状
腫れ、皮膚の変色、痛みなどがある。X線で調べないと皮下骨折と区別しにくい。小さな骨折が捻挫に伴っていることが少なくない。
手当
- 冷水または氷嚢で患部を冷やし安静にする。
- 足首を捻挫した場合で、どうしても歩行できないときは、私費首の包帯や固定テーピングをする。
打撲
外にキズがない場合でも、内部に損傷を伴うものもある。頭、胸、腹、の打撲は内臓損傷(脳、肝臓、すい臓、脾臓、腎臓、胃腸)や内出血を伴い、痛みや貧血、一般状態の悪化を起こす。
手当
- 骨折、脱臼、捻挫と同時に安静にして、原則として冷やす。
- 冷水または氷嚢で患部を冷やし安静にする。
- 初期には動かしたり小田ためたり入浴したりすると内出血や腫れを悪化させる。
肉離れ
筋肉を構成している筋繊維や結合組織の損傷である。背筋の肉離れは、不自然な格好で重いものを持ち上げたときなどに起こる。大腿、下腿などの場合はスポーツ外傷に多く、急に運動したり、筋肉に力が入って収縮しているところを強打した場合に起こる。
手当
- 冷やして安静にする。背筋の場合は板を入れる。
- 冷水または氷嚢で患部を冷やし安静にする。
- 激しい痛みのある時は、医師の診療が必要
アキレス腱の断裂
スポーツ中などに急に起こり、直ちに運動不能になり、つま先で立てず、患部を押さえると痛みを訴える。
手当
- 歩かせない
- 下向きに寝かせて固定する。上向きの時は足首を伸ばしたまま医療機関に送る。
突き指
硬いものを指先で急激についたとき、あるいは球技中ボールが指先に突き当たったときなどに起こる。単なる打撲、捻挫のこともあるが、骨折、脱臼、腱の断裂を伴っていることもある。
手当
- 冷たい水で冷やす。
- 割りばしなどで固定する
- 患部を高くしておく
- 変形したり指が動かないときは医師の診療が必要。
熱中症
熱中症とは熱い環境で生じる障害のこと。熱波によりおもに高齢者や幼児が高温環境や暑熱環境でおこるものがある。
Ⅰ度
症状:
- めまい
- 失神(立ちくらみ)
- 大量の汗
- 筋肉の痛み
- 硬直(こむら返り)
応急手当:
- 涼しい場所へいく。
- 衣類を緩めて安静にする。
- 意識があれば水分補給をする。
Ⅱ度
症状:
- 頭痛
- 吐き気
- 嘔吐
- 倦怠感
- 虚脱感
- 集中力や判断力の低下
応急手当:
- Ⅰ度と同じ手当とともに経口補水液(生理食塩水0.9%)を補給。
- 出来ないときは点滴が必要。
Ⅲ度
症状:
- 意識障害
- けいれん
- 運動障害(会話がおかしい、身体がガクガクとひきつける、まっすぐに走れない、歩けない)
- 高体温(体に触れると熱い)
応急手当:
- 死亡の危険性のある緊急事態。
- 体を冷やしながら病院へ。
- 濡れたタオルを当て風を送る。
- 太い血管を冷やす。
- 心肺蘇生法(気道確保)