棘下筋と小円筋炎の概要
棘下筋と小円筋は、肩の後ろ側に位置する重要な筋肉で、肩の回旋運動や安定性に大きく関わります。これらの筋肉が炎症を起こす状態を棘下筋炎および小円筋炎と呼びます。肩の痛みや可動域制限を引き起こす原因の一つとして、多くの人が知らずに悩まされています。
棘下筋と小円筋の役割
棘下筋:肩甲骨から上腕骨に付着し、肩関節の外旋(腕を外側に回す)動作に関与。
小円筋:棘下筋の下に位置し、同じく肩関節の外旋および肩の安定性に寄与。
棘下筋と小円筋炎の主な原因
1. オーバーユース(過使用)
スポーツ選手(野球、テニス、バドミントンなど)や肉体労働者など、肩を頻繁に使用する人に多く見られます。これらの筋肉に負荷がかかりすぎることで炎症が生じます。
2. 姿勢の問題
猫背や肩が前方に突き出た姿勢は、肩関節に不自然な負荷をかけ、棘下筋と小円筋にストレスがかかりやすくなります。
3. 外傷やケガ
転倒や事故などで肩に強い衝撃を受けた場合にも、これらの筋肉が損傷し、炎症が発生することがあります。
4. 加齢による筋力低下
年齢と共に筋力が低下し、肩周囲の筋肉や腱が弱くなるため、ちょっとした動作でも炎症を引き起こしやすくなります。
棘下筋と小円筋炎の症状
1. 肩の痛み
肩の後ろ側に痛みを感じることが多く、特に腕を外側に回すときに痛みが強くなることがあります。
2. 肩の可動域制限
外旋運動や肩を上げる動作が困難になり、肩の動きが制限されます。特に寝返りや服を着替える動作で痛みが増すことがあります。
3. 肩の筋力低下
肩の筋力が低下し、特に腕を持ち上げたり、物を持つ際に力が入らなくなることがあります。
4. 夜間痛
夜間に肩の痛みが強くなり、寝返りを打つ際に痛みで目が覚めることもあります。
棘下筋と小円筋炎の診断方法
1. 問診と視診
症状の出始めた時期や痛みの程度、日常生活での影響について詳しくヒアリングします。
2. 徒手検査
肩の外旋や内旋、挙上などの動作を確認し、どの動作で痛みが強くなるかを調べます。特に肩の外旋で痛みが増す場合、棘下筋や小円筋の炎症が疑われます。
3. 画像検査
レントゲンやMRIを用いて、肩の関節や筋肉の状態を確認します。特に慢性的な痛みの場合、腱板損傷などが併発していないかを確認するため、画像検査が重要です。
棘下筋と小円筋炎の治療法
1. 保存療法
安静:炎症が起きている筋肉を休めることが最優先です。過度な肩の動きを避け、症状が改善するまで肩に負担をかけないようにします。
アイシング:痛みが強い場合はアイシングを行い、炎症を軽減します。1回20分を目安に、1日に数回行うのが効果的です。
ストレッチと筋力強化:炎症が落ち着いたら、肩周囲の筋肉を伸ばすストレッチと、肩の安定性を高めるための筋力トレーニングを開始します。
2. 物理療法
超音波治療や電気刺激療法を用いて、血行を促進し、筋肉の回復を助けます。これにより痛みが和らぎ、炎症が軽減されます。
3. 薬物療法
鎮痛剤や抗炎症薬(NSAIDs)を使用し、痛みと炎症を抑えます。長期的な使用は避けるべきですが、急性期の痛みには有効です。
4. 鍼灸・整体治療
専門的な鍼灸や整体施術で、肩の炎症を和らげ、筋肉の緊張を解消することが可能です。また、体全体のバランスを整えることで再発を防ぐことも期待できます。
5. 手術療法
稀に保存療法で改善しない重症例では、手術が検討されることがあります。特に腱板損傷が伴う場合には、手術が必要となるケースもあります。
棘下筋と小円筋炎の予防法
1. 肩周りのストレッチと筋力強化
日常的に肩甲骨周囲の筋肉をしっかりと伸ばし、肩の外旋筋の筋力を強化することで、炎症の再発を防ぐことができます。
2. 姿勢の改善
デスクワーク中は定期的に休憩を取り、肩を動かして血行を促進することが重要です。また、猫背にならないように注意し、正しい姿勢を保つことも炎症予防に役立ちます。
3. 肩の負荷を減らす
重い物を持つ際には肩に負担がかからないよう、体全体を使って持つように意識します。また、過度な運動や肩の使い過ぎに注意することが大切です。
まとめ
棘下筋と小円筋炎は、肩の回旋や安定性に関わる重要な筋肉が炎症を起こした状態です。オーバーユースや姿勢不良、外傷などが原因で発症し、肩の痛みや可動域の制限を引き起こします。早期の診断と適切な治療を受けることで、症状の改善と再発防止が可能です。
もしあなたが肩の痛みや動かしづらさでお困りなら、早めに専門家に相談し、適切な治療を受けることが大切です。当院では、痛みのないやさしい施術で肩の不調を改善し、再発を防ぐサポートを行っています。お気軽にご相談ください。